行政機関におけるプロジェクト管理の役割
過去 50 年にわたり、行政機関の職員はプロジェクト ベースの業務でプロジェクト管理を使用してきましたが、プロジェクト管理を使用して公共部門の仕事を進めることがここ数十年で増えています。今日、プロジェクト管理は行政機関のあらゆるセクター、あらゆる階層で使用されています。
行政機関内部のプロジェクト作業とプロジェクト管理に関する詳細を以下に紹介します。
- 議会のリーダー、政治任命者、公務員、そして市民など多数の人々が、行政業務の改善と効率向上を訴えています。行政機関の改善に向けた取り組みの大半では、プロジェクト管理を使用して行政業務を改善しています。
- さまざまな行政機関で費用削減が行われているために、今日の多くの行政プロジェクトでは、限られた時間とリソースで価値を提供する必要があります。
- 行政機関では、プロジェクト管理の原則がますます活用されています。しかし、すべての組織と同じく、非効率なプロジェクト作業に多大な資金を無駄にしていることがよくあります。Project Management Institute (プロジェクト マネジメント協会) による2020 Pulse of the Professionレポートによると、行政機関を含むすべての組織において、プロジェクトに投資した資金の 11.4% が不十分なパフォーマンスのせいで無駄になっています。つまり、10 億ドルの投資に対して 1 億 1,400 万ドルが無駄になっているのです。
- 行政機関でプロジェクト管理の活用が進む原因となったトレンドがいくつかあります。
- 行政機関によっては,規模と責任のために複雑性が生じ,強力なプロジェクト管理が必要になります。
ダラスを拠点とし、Project Management Institute (プロジェクト マネジメント協会) の認定取得を目指す専門家向けのブートキャンプを開催しているProject Management Training Institute (プロジェクト管理トレーニング協会)は、ヤド・セナパシー (Yad Senapathy) 氏が設立し、CEO を務めています。そのクライアントには、多数の行政機関とその職員が含まれます。
Senapathy 氏は、多くの行政機関で見られる規模と複雑さのために、プロジェクト管理の改善が必要になっていると強調します。「DOD (米国国防総省) だけでも 320 万人が雇用されています。」と Senapathy 氏は言います。「その複雑さは想像できるでしょう。それだけでも、プロジェクト管理が必要になります。この複雑さに対処するのにふさわしい構造がなければ、多額の資金が無駄に使われます。」 - 行政機関は民間の請負業者にますます多くの作業を外部委託しており、その職員は、請負業者と行政機関のスタッフを管理して、プロジェクトを進める必要があります。
- 行政機関では、効果的なプロジェクト管理によって、独自の価値と存在意義を示したいと考えています。
- より良い顧客サービスは行政機関の内部でますます重要になっていますが、プロジェクト管理がそのフレームワークを提供します。
- 民間部門と同じく、行政機関でも市民が 24 時間いつでもデータに安全にアクセスできる必要があり、より効率的な作業が求められます。
- 行政機関によっては,規模と責任のために複雑性が生じ,強力なプロジェクト管理が必要になります。
利潤を追求する民間部門とは異なり、行政機関にとって優れたプロジェクト管理はさほど重要ではないという誤解があると Senapathy 氏は言います。「利潤が重要でなければプロジェクト管理は不要だという誤解です。行政機関は納税者に対して同様の責任を負っています。支払われたすべての税金について、説明義務を負っているのです。そのことについては、最終的に全員が責任を負います。ただでもらえる物などありません。」
Senapathy 氏によると、事実、「行政機関がプロジェクト管理に投資することは、民間企業の場合よりもさらに重要だと思います。行政プロジェクトでは、非公式のフォーラムにおける個々の市民による監視の目から、正式な議会公聴会に至るまで、細かな監視を受けています。」
Project Management Institute (プロジェクト マネジメント協会)のネットワーク プログラム担当ディレクター、スティーブン・タウンゼント (Stephen Townsend) 氏は、企業が株主のために行うのと同様に、行政機関も市民に価値を提供しなければならないと主張します。「その価値は、国家の安全保障、道路、およびインフラ プログラムやサービス プログラムを通じて生まれます。」と彼は言います。「強力なプロジェクト管理規範があれば、行政機関が適切なソリューションを効率的かつ効果的に提供するのに役立ちます。」
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行政プロジェクト管理のメリット
行政業務を対象とする優れたプロジェクト管理のその他のメリットを以下に示します。
- プロジェクト管理により、引き受ける価値があるプロジェクトかどうかを把握できる。
「成功する可能性が低い、またはリスクの高い投機的事業である場合、優れたビジネス ケースとレビュー プロセスによって、行政機関が不適切な投資を行うのを防ぐことができます。」と Townsend 氏は言います。 - すべてのプロジェクトを通じて、および組織全体で、チームが一貫して作業を行える構造を整える。
- パンデミックなど、災害や障害に対処する際の効率を高める。
「パンデミックということで言えば、一貫した組織プロセスを持つことで、業務をシームレスに統合できます。」と Senapathy 氏は言います。「プロジェクト管理が存在しなかったらどうでしょう?行政機関も職員もみな大混乱です。」
プロジェクト管理の作業と哲学を通じて、「受動的ではなく積極的に行動することができます。」と Senapathy 氏は言います。「今回のパンデミックは、この国がどれだけ迅速に対応できるかを示す唯一最大の実例でした... プロジェクト管理で素晴らしいことが可能になります。」 - 自分が取り組んでいる各プロジェクトで、プロジェクトのツールと手法を開発し直すのを避けることができる。
- 職員が過去のデータ、過去の作業、プロジェクト管理のベスト プラクティスにアクセスできるため、プロジェクトの一貫性が向上し、よりよく実行できる。
- プロジェクトの成果物が (期限内に) 完成したかどうかを監視する。
- 作業を完了させる際の責任を職員が理解するのに役立つ。
- プロジェクトのチームやリーダーが、行政機関や政府の幹部に進捗状況を報告するのに役立つ。
- 新しいプロジェクト管理戦略について、構造化された根拠を提供する。
- 新しいテクノロジーが構造化されたプロジェクト管理の一部になるため、それによりよく適応できる。
- プロジェクトの作業では、行政機関の外部で作業を行う多数の職員など、さまざまな関係者に影響が及ぶ可能性がある。優れたプロジェクト管理により、職員はそうした関係者とより良いコミュニケーションを取り、懸念に対処できる。
- 問題を解決するための効果的な方法を誰もがよりよく理解できる。
行政プロジェクト管理の課題
行政機関の幹部からサポートが不十分である、行政機関のルールによって仕事を妨げられる、職員向けトレーニングの資金が限られているなど、職員は行政プロジェクトを管理する上で多くの課題に遭遇するでしょう。
優れた行政プロジェクト管理に対する課題をいくつか次に示します。
- プロジェクト管理原則に関する知識が限られている:長年にわたり、行政機関では標準的なプロジェクト管理原則が一貫性のある形で使用されていませんでした。現在では、プロジェクト管理を理解している公務員が増えていますが、多くの上級マネージャーは依然として、プロジェクト管理の展開方法に影響を与える知識が限られています。
- 行政機関によるサポートが不十分:知識が限られているせいで、行政機関の幹部がプロジェクト管理の価値を理解していない場合もあります。つまり、多くの行政機関では、資金面のサポートやその他のリソースがほとんど提供されていないのです。
- スポンサーシップが不安定:行政機関では幹部の離職率が高くなる傾向があり、選挙が実施されると、新たに選出されたリーダーがこれらの機関を監督することになります。このような変化はどれも、行政プロジェクトの進捗を妨げる可能性があります。
- 業務を制約する規則や規制: 民間業界では多くの場合、作業全体やプロジェクト管理が規則によって支配されていますが、幹部や職員はプロジェクトの成功を目指して、そうした規則の多くを曲げることがあります。(コンプライアンス管理の詳細については、「コンプライアンス管理: 成功に向けたルール」に関する記事をご覧ください。) しかし、行政機関では多くの場合、組織が法の権威を有しているので、これらの規則に従う必要があります。
“たとえば,利益相反に関連する法律やルールがあり,公正な調達プロセスを通じて競争を促進し,パフォーマンス報告の透明性を高めています。」と Townsend 氏は言います。「しかし、これらの要件にはコストが伴います。特定のタスクの完了に時間がかかる場合もあれば、レビューやチェックポイントが義務付けられている場合もあります。市民によるレビューやコメントの期間があるかもしれませんが、これを実施しなかったり、適切に扱わなかったりすると、法的問題につながる可能性があります。行政機関のプロジェクト リーダーは、企業のプロジェクト リーダーが遭遇しないであろう、そうした要件に精通している必要があります。」Institute for Neuro & Behavioral Project Management (神経・行動プロジェクト管理研究所)のジョシュ・ラミレス (Josh Ramirez) 所長は、これらの規制と規則によって、公務員の全体的な焦点に影響が及ぶと述べています。「それが彼らの重点領域になります。」と彼は言います。「そこに集中しなければならないので、エネルギーを注ぐのです。」
そのため、職員が受け入れ可能だと考える従来の枠組みに収まらない仕事の進め方をマネージャーが提案すると、「[そのアイデアに] 抵抗を示すこともあります。」と彼は言います。「的外れと見なされることすらあるのです。」 - 行政機関の職員は地理的に分散している:行政機関によっては、職員が異なる場所の複数のオフィスで勤務している場合もあり、プロジェクト管理チームの監督がより困難になる可能性があります。(これは民間部門よりも行政機関で一般的に見られることかもしれません。)
- 採用と雇用に関する行政機関の方針:チーム リーダーはプロジェクトを完了するために、自分の機関や他の行政機関のさまざまな分野に属する専門家に頼る場合があります。採用と雇用に関する行政機関の方針によって、それが困難な場合があります。
- 行政機関や行政部門における効果的でない共同作業:民間企業では、共同作業を妨げる構造があることも珍しくはありませんが、その傾向は行政機関の内部、および行政機関の間でより顕著です。
「民間業界では、さまざまな部門間の相互作用が行政機関よりもはるかに同期しています。」と Senapathy 氏は言います。「[行政機関では] 相互作用が効率的に機能しません。」 - 官僚的な環境全体:特定可能な規則や規制以外にも、成文化されているかされていないかに関係なく、すべてのプロセスを支配する規則が存在し、行政機関は多くの場合そうした環境で業務を行っています。それにより、変化に抵抗したり、問題への迅速な対応を妨げたりするといったことがたびたび起こります。
- 職員がプロジェクト管理用語を理解していない、または使用していない:プロジェクト管理トレーニングを行うことで、職員は効果的なプロジェクト管理に関する共通言語を理解できます。行政機関の職員は、そうした言語に無知だったり、抵抗感を抱いたりすることがあります。
「現代のプロジェクト管理用語を、長年使用されてきたビジネス言語の既存文化に組み込むことは、組織の変更管理に特有の課題です。」と Senapathy 氏は言います。 - 漸進的な思考が規範になっている:多くの場合、行政機関はゆっくりとした変化や漸進的な変化しか受け入れません。
- 深く根を下ろすプロセスとツール:多くの民間企業では、ツールやプロセスを改善すべく継続的にイノベーションを行っていますが、行政機関にはその原動力がないことがよくあります。
- トレーニングのための資金が最小限に抑えられている:行政機関では、プロジェクト管理のリーダーをトレーニングするための資金が限られている場合があります。また、予算を削減する必要があると、そうした資金が最初に削減されがちです。
「教育関連の予算は最初に締めつけられる分野の 1 つなので、幹部層や複数の業務ラインにまたがるプログラム管理の役割について、トレーニングの優先順位を上げることはかなり困難かもしれません。」と Senapathy 氏は言います。
優れたプロジェクト管理はどのような形で行政機関に好ましい変化をもたらすのか
優れたプロジェクト管理を活用すると、プロジェクトを成功に導く以上のことができます。行政機関の業務形態を変え、柔軟性を高め、行政機関内部でイノベーションの文化を生み出す可能性があります。
プロジェクト管理で行政機関に変化をもたらすを重要な方法を以下に示します。
- プロジェクト管理は変化のテコとなり得る:行政機関の多くは変化を嫌っています。優れたプロジェクト管理は本質的に、好ましい変化をもたらします。チーム メンバーは、自分の潜在的な役割を、変化の手段として認識する必要があります。
- プロジェクト管理は柔軟性を高める:前述したように、行政機関の業務は柔軟性の低い官僚的な環境で行われていることが多いです。しかし、優れたプロジェクト管理があれば、行政機関の幹部と職員は業務の計画方法と実行方法を、必要に応じて調整できるはずです。
- プロジェクト管理はイノベーションを促進する:行政機関はこれまで以上に、市民により良いサービスを提供する方法を探しています。そうした行政機関のイノベーションの多くは、プロジェクト管理から生まれます。一例として、連邦政府の新規職員インセンティブ プログラムである Securing Americans Value and Efficiency (アメリカ人の価値と効率を守る:SAVE) があります。このプログラムでは、効率を改善して費用を節約するアイデアを生み出した職員に報酬を与えます。
行政機関にプロジェクト管理の文化を導入する方法
行政機関にプロジェクト管理の文化を導入するのは困難な場合があります。しかし、管理に携わる幹部はそれを行うことができます。教育やトレーニングから、方法論の開発、適切な監視に至るまで、すべてのことに焦点を当てるだけです。
まずは連邦政府機関が、Project Management Institute (プロジェクト マネジメント協会) のプロジェクト マネジメント プロフェッショナル (PMP) 認定を受けた求職者を認識する必要があります。この認定資格では、プロジェクト管理に関する知識と専門知識のレベルを認定します。民間部門や行政機関で働く多数のプロジェクト マネージャーが、その認定を受けています。
バージニア州に拠点を置くプロジェクト管理トレーニング会社 ESI International (ESI インターナショナル) は、行政機関内でプロジェクト管理を実施するためのステップを他にもいくつか特定しました。その例を以下に紹介します。
- 教育とトレーニング:職員の適切な教育とトレーニングは、優れたプロジェクト管理を促進する文化的変化の基礎となります。
- 成熟度と能力の評価:組織は、プロジェクト管理業務における強みと弱みを評価し、理解する必要があります。また、必要に応じて改善を行う必要があります。
- 方法論の開発:リーダーは、職員がプロジェクトにどう取り組むかを導く一貫した方法論を作成し、それに従う必要があります。そうすることで、職員はプロジェクトごとにプロセスやツールを開発し直す必要がなくなります。
- プロジェクトの実行をサポートする:組織は、実際のプロジェクトの作業においてプロジェクト マネージャーをサポートする必要があります。プロジェクトの成功に貢献できるよう、知識を職員に移転できる経験豊富なコーチやメンターの採用がその 1 つです。
- センター オブ コンピテンス:オフィスを一元化することで、行政機関全体のプロジェクトを戦略的に監視できます。また、プロジェクト管理の専門知識やサポートも提供できます。
- 戦略的監視:組織内のトップ リーダーは、組織のプロジェクト管理プロセスに関与し続ける必要があります。それにより、組織のプロジェクトを組織の全体的な目標と一致させることができます。
プロジェクト管理におけるアーンド バリュー管理とは?
アーンド バリュー管理とは、プロジェクトで達成された作業の量と、任意の時点でプロジェクトに費やされた予算を追跡する方法です。
アーンド バリュー管理は、行政機関におけるプロジェクト管理の重要な一部であり、多くの場合、連邦政府のプロジェクトで必要とされます。国防総省と NASA は、1960 年代からアーンド バリュー管理を用いてきました。
この方法を使用することで、プロジェクト マネージャーは完了したプロジェクト作業全体と、プロジェクトに費やされた時間と資金を追跡します。その後、プロジェクトの総予算と比較できます。これにより、チーム メンバーはスケジュールよりも進んでいるか遅れているかを評価できます。また、支出が超過しているか、予算内にあるかを評価できます。
「アーンド バリュー管理は、行政プロジェクト管理のすべてで、より強調されている分野の 1 つです。」と Ramirez 氏は言います。「それによって、進行中の事態を可視化できます。」
連邦政府によるテクノロジーの購入をガイドするプログラム管理フレームワーク
2015 年、Project Manage Institute (プロジェクト マネジメント協会) はホワイト ペーパーを刊行し、連邦政府機関がプロジェクト管理を使用して、コンピューター システムの新規購入や既存システムの変更を改善する方法のガイダンスとフレームワークを提供しました。詳細はPMI 標準フレームワークをご覧ください。
一般的なプロジェクト管理フレームワーク
フレームワーク | 特性 | 使用に適したプロジェクトの種類 |
---|---|---|
制御された環境におけるプロジェクト (PRINCE2) | 高度に構造化された、詳細な事前計画 | 大幅な変更や適応を必要とする可能性が低い、明確に定義されたプロジェクト |
クリティカル チェーン プロジェクト管理 (CCPM) | 時間を無駄にせず、プロジェクトの各フェーズの迅速な移行に重点を置く | さまざまな種類のプロジェクト |
リーン | 工数とリソースの両方で無駄を最小限に抑え、多くの場合、プロセスの改善に重点を置く | 急速に変化する環境での複雑なプロジェクト |
エクストリーム プロジェクト管理 | 急速に変化する計画やスケジュールへの適応性が高い | 急速に変化する環境での複雑なプロジェクト |
スクラム | 迅速な進行に加え、必要な変更や修正に適応するよう設計されている。多くの場合、プロジェクトは 2 ~ 4 週間のスプリントに分割される | 定義が明確でない成果物や無形の成果物が関わるプロジェクト (ソフトウェアを含む) |
ウォーターフォール | 最も古く、最も伝統的なプロジェクト管理アプローチの 1 つ。プロジェクトを最初から最後まで計画する必要がある (プロジェクトの各フェーズは、前のフェーズが完了するまで開始されない) | 大幅な変更や適応を必要とする可能性が低い、明確に定義されたプロジェクト |
連邦政府の規制、ガイドライン、認定
2016 年、連邦政府は業務におけるプロジェクト管理を改善する法律を承認し、プロジェクト管理を統括するその他の規制を制定するとともに、プロジェクト管理能力を証明する政府マネージャー向けの特別な認定を策定しました。そのすべてを以下で詳しく説明します。
プログラム管理改善説明責任法
2016 年 12 月、オバマ大統領は Program Management Improvement Accountability Act (プログラム管理改善説明責任法: PMIAA) に署名しました。2018年 6 月には、連邦管理予算局が覚書 M-18-19を発行し,連邦政府機関がこの法律を実施する上でガイドとなる,連邦政府による最初のガイダンスを制定しました。この法律は、連邦政府全体のプログラムやプロジェクトの管理において、連邦政府職員が実績のある慣行を使用することを目的としています。その目標として以下のものがあります。
- プログラム管理とプロジェクト管理におけるポリシー、人員配置、トレーニングを改善するためのフレームワークを設定する
- 幹部職員がプログラムやプロジェクトのレビューを実施し、適切に管理されていることを確認する
- プロジェクト管理とプログラム管理を継続的に改善すべく、ポリシーとプロセスの開発を調整する
プロジェクト管理リーダーは、プロジェクトとプログラムの管理を区別します。この文脈におけるプロジェクトとは、組織の職員が製品やサービスを作成または変更するために行う、定義された量の作業です。プログラムとは、関連するプロジェクトや業務アクティビティのグループです。マネージャーはこれらのプロジェクトやアクティビティを調整し、職員が別々に管理していた場合よりも全体的な利益を提供できるようにします。
プロジェクト管理における調達規制
連邦政府は、コンピューター テクノロジーの購入や変更など、行政機関用の資産を購入する際に、プロジェクト管理に関する特定の行動を義務付けています。規制の例として、Federal Acquisition Regulation (連邦調達規制) や Federal Acquisition Streamlining Act (連邦調達合理化法) があります。
プログラムおよびプロジェクト マネージャー向け連邦調達認定
連邦政府は、連邦機関のマネージャーがプログラム管理とプロジェクト管理の能力を証明できる、特別な認定を制定しています。この認定は、Federal Acquisition Certification for Program and Project Managers (プログラムおよびプロジェクト マネージャー向け連邦調達認定: FAC-P/PM) と呼ばれています。この認定は、国防総省を除くすべての連邦機関が承認しています。
認定では、プログラム マネージャーとプロジェクト マネージャーに必要とされる本質的能力に焦点を当てています。
認定には 3 つのレベルがあります。
- エントリ/アプレンティス:このレベルは、低リスクの単純なプロジェクトを管理する能力があることを意味します。
- 中間レベル/ジャーニーマン:低レベルまたは中レベルのリスクを伴うプロジェクトを管理する能力があることを意味します。また、プロジェクトに基本的な管理プラクティスを適用することもできます。
- 上級/エキスパート:中レベルまたは高レベルのリスクを伴うプログラムやプロジェクトの管理と評価を行えます。プロジェクト管理のプラクティスに関するかなりの知識と経験を有しています。
州職員向けカリフォルニア州プロジェクト管理推奨事項
一部の州では、プロジェクト管理に関する具体的なガイダンスを職員に提供しています。たとえば、California Project Management Office (カリフォルニア州プロジェクト管理オフィス) は、カリフォルニア州機関におけるプロジェクト管理のフレームワークを提供する、461 ページの文書を作成しました。この文書には、プロジェクト管理方法に関するガイダンスとインサイトが記載されています。詳細については、公式文書をお読みください。
行政プロジェクト管理の実施の成功例
地方自治体、州、連邦政府機関は、プロジェクト管理を用いることで、何万ものプロジェクトを成功に導いています。以下はその一例です。
- Michigan Office of Project Management (ミシガン州プロジェクト管理オフィス):ミシガン州の情報技術プロジェクトでは、スケジュール遅延、予算超過、またはその両方が頻発していました。その状態を変えるべく、ミシガン州はプロジェクト管理オフィスを新設し、州職員がプロジェクト管理文化を確立するのに役立つインフラストラクチャを構築しました。その後、州のリーダーは、すべての州政府機関を支援すべくプロジェクト管理のサポート体制を構築し、州の日常業務の大部分にプロジェクト管理を組み入れることを可能にしました。プロジェクトの詳細については、「行政機関におけるプロジェクト管理文化の導入」に関する記事をご覧ください。
- New Orleans VA Hospital (ニューオーリンズ VA 病院):2005年、ハリケーン カトリーナによって、ルイジアナ州ニューオーリンズの何千もの建物が破壊されました。その中には、医師や他の医療提供者が医学生を訓練し、医療研究を行い、4 万人に上る軍人家族にサービスを提供してきた、退役軍人省の病院施設もありました。
議会は 2006 年、敷地面積 160 万平方フィートという代替複合施設の予算を承認しました。プロジェクト リーダーは当初から、プロジェクトのリスクを理解し、関係者の声に耳を傾け、スコープの非効率な変更を防ぐことに、熱心に取り組みました。
病院施設の 3 つのフェーズを予定通りに終了させ、プロジェクトの最終的なコストは予算を 14% 下回りました。詳細については、「退役軍人省が退役軍人の医療改善を通じて利益を実現する」ことに関する記事をご覧ください。 - 司法省のウェブサイト:2014年の時点で、米国司法省のウェブサイトには 45 万件を超えるウェブページ、文書、ファイルが格納されていました。弁護士、法執行当局の職員、およびその他の多くの市民は、提供されたそれらの情報の価値を評価しています。しかし、司法省の 100 以上の部局が、幅広いプロセスとテクノロジーを使用して、ウェブサイトの自分たちのセクションを維持する必要に迫られていました。ウェブサイトの維持が大きな負担になりつつあったのです。
司法省のプロジェクト チームは、スクラム アジャイル手法を使用してウェブサイトを段階的に再構築することにしました。プロジェクトの最初の仕事は、ウェブサイト コンテンツ管理システムを構築し、ウェブサイトの 1 つのセクションを立ち上げることでした。最終的には、12 のメジャー バージョンのリリースで、120 のセクションが存在することになります。
このインクリメンタル アプローチにより、ウェブサイトのユーザーは最初のリリースに関するフィードバックを提供することができ、2 度目以降のリリースで変更を加える際のインプットとなりました。リリースを重ねるたびに、ユーザーにより多くの機能が提供され、各リリースの完了に要する時間も少なくなりました。詳細については、「ケース スタディ: アジャイルな政府と司法省」に関する記事をご覧ください。
効果的な行政プロジェクト管理のためのベスト プラクティスと専門家のヒント
専門家は、リーダーや職員が効果的なプロジェクト管理を行うのに役立つ推奨事項を多数提供しています。また、組織のトップ リーダーの賛同を得る、プロジェクトの開始時点でリスクを把握する、戦略を組み合わせて活用するなどのヒントがあります。
専門家による推奨事項とヒントを次に示します。
- 構造と戦略に関するトップ リーダーの賛同を得る:組織のリーダーは、優れたプロジェクト管理の原則を理解し、プロジェクトの達成に向けた全体的な戦略を承認する必要があります。それがなければ、作業に対する財務面などのサポートが一時的なものになってしまい、いつ中断されるかわかりません。また、組織のリーダーによるサポートは、組織全体の職員からのさらに多くのサポートにつながります。
Project Management Training Institute (プロジェクト マネジメント トレーニング協会) の Senapathy 氏は、「(プロジェクトとプロセスへの)賛同は一番下ではなく、一番上から始まるべきです。」と言います。
“行政機関では,トップダウン型のプロジェクト管理の規律を重視する必要があります。“とInstitute for Neuro & Behavioral Project Management (神経・行動プロジェクト管理協会) の Ramirez 氏は言います。「そこでは、安全性、コスト管理、あるいは自分が納品または構築している技術製品の生産といったように、分野の的を絞らなければなりません。」 - プロジェクトから影響を受けるであろう関係者全員のことを考え、耳を傾ける:プロジェクトによって幅広い人々が影響を受ける可能性があります。それは 1 つの機関、さらにはエンドユーザーに留まりません。影響を受けるかもしれないすべての人と、作業に対するその人たちの反応を把握することが重要です。
「関係者とは、プロジェクトとそのアウトプットから影響を受けている、または影響を受けていると自覚している個人やグループを指します。」と、Project Management Institute (プロジェクト マネジメント協会) の Townsend 氏は言います。「関係者は、計画、コスト、スケジュールなど、プロジェクトのあらゆる側面に影響を与えます。関係者が誰なのか、どのように関わるのか、彼らの間で生じうる対立をどう調整するのかを理解することが重要です。」 - 計画を作成し、開始する前に明確な方向性を示す:アジャイル手法を使用してプロジェクトを進める場合、プランニングはかなりの確率で他のプロジェクト管理方法と異なるものになります。いずれにしても、大まかな目標を設定し、チームにそれらの目標を確実に理解させる必要があります。
「早く始めすぎると、目標が明確でなくなったり、誤解されたり、主要な要件が見逃されたりする可能性があります。」と Townsend 氏は言います。「プロジェクトのライフサイクルを通じて計画を定期的にレビューして、優れた計画を事前に立てると、成功する確率に大きな違いが生じます。」 - 進捗をしっかり監視する:特に従来型のプロジェクト管理では、チームがベンチマーク、期日、進捗を監視することが不可欠です。
- 監視に基づいて迅速に調整する:監視の結果、ベンチマークや期日などの問題が見落とされていることが判明した場合、チームは素早く調整する必要があります。巨額の予算を伴うことがある、行政プロジェクトの場合は特にそうです。
「捕捉するのが早ければ早いほど、(問題や) 数百万ドルの流出を防げます。」と Senapathy 氏は言います。 - 選択をする:行政機関の多数の業務に一斉に影響を与えるような、広範囲のプロジェクトを行ってはいけません。プロジェクトを選び、リーダーシップの賛同を得ることで、特定分野の業務を改善できます。そうすれば、組織全体に混乱を引き起こすことはありません。
- 成功を思い描く:プロジェクトの結果へと至る道筋と、その結果がどのようなものかを思い描き、明確にします。プロジェクトのスコープを設定することで、その一部を実行できます。
- 想定している受益者のニーズを、プロジェクトで満たせるようにする:「極めて重要な優れたプロジェクト管理を行うことで、想定している受益者のニーズが、そのプロジェクトの成果物によって満たされます。」と Tounsend 氏は言います。「約束したすべての特性を有する成果物を迅速に生み出したものの、その成果物を使用する人々のニーズを満たせなければ、プロジェクトは失敗です。」
- 「Aチーム」をまとめる:職務経歴書を見る限り適任ではないと思えても、組織内の頭脳明晰な人物を選んでプロジェクト チームに加えましょう。頭脳明晰な人物は、より大きな目標を思い描き、真のイノベーションを促進することができます。
- 職員の能力開発目標とキャリア目標をプロジェクト管理に組み込む:職員は、プロジェクト管理業務によって自分の職務や報酬に影響が出ると、プロジェクトの作業に対してより強く反応します。
「各個人からやる気を引き出し、大きな責任を負ってもらうことが必要です。」と Senapthy 氏は言います。 - 行動経済学と人間行動科学について考える:人間による作業を進めるには、人間がどのように意思決定するのかを考慮する必要があると、神経・行動プロジェクト管理協会の Ramirez 氏は言います。
「私たちは行動面に十分な焦点を当てていません。」と彼は言います。「行政機関であれ、民間部門であれ、またはどのような組織であれ、人間という要素を組み込まないと、進捗は遅くなるでしょう。」つまり、金銭的なインセンティブ、安定した雇用、上司との合意など、人々が意思決定を行う理由を考える必要があります。 - プロジェクトにまつわるリスクを知る:どのようなプロジェクトであっても、プロジェクト リーダーとチーム メンバーは開始時点で、そのプロジェクトに固有のリスクと課題を評価する必要があります。そこから調整を加えるなどの措置を講じて、そうしたリスクに対処します。
「リスク管理では、プラスかマイナスかを問わず、プロジェクトとその結果に影響を与える要因を考慮します。」と Townsend 氏は言います。「リスクによってはプロジェクトを脱線させる場合もあれば、チームによる価値の提供を加速または増加させる場合もあります。優れたリスク管理によって、プロジェクト全体でこれらの脅威と機会を可視化し、チームがリスクを軽減して、機会を活用できるようにします。
」しかし Ramirez 氏によると、リスク分析の中には、人的要因を認識するほど深く掘り下げないものもあります。その結果、リスクが自分の職にどのような影響を与えるか、あるいは組織内の上司の意見や見解など、一部の分野のリスクを認識しようとしなくなることがあります。
「人は多くの誘因によって、さらに別のリスクを考慮しなくなります。」と Ramirez 氏は言います。プロジェクト リーダーはそうした阻害要因に対処し、検討する必要があると、彼は言います。 - 最初は小さく、徐々にスケール アップする:自分の組織が正式なプロジェクト管理を展開し始めたばかりの場合は、小規模なプロジェクトから始めましょう。小規模なプロジェクトや短期のプロジェクトでプロセスをテストすることで、チーム メンバーはより大規模なプロジェクトに進む前に、プロセスを理解し、微調整できるようになります。
- 機敏に、かつ積極的に、戦略の組み合わせを活用する:「現実世界のプロジェクトでは機敏である必要があります。」と Senapathy 氏は言います。つまり、プロジェクト リーダーが、ウォーターフォールなど従来型のプロジェクト管理フレームワークをプロジェクトのある部分で使用し、次にアジャイルベースのスクラム フレームワークを別の部分で用いるということです。「プロセスを柔軟に保ちましょう。」と彼は言います。(さまざまなプロジェクト管理手法の詳細については、「違いは?Agile 対 Scrum 対 Waterfall 対 Kanban。」をご覧ください。)
「一般的に、どれか 1 つのフレームワークの理論にプロジェクトが完全に当てはまることは決してないので、従来の方法論とアジャイルの方法論を組み合わせることで、利用可能な予算とスケジュールから最大のパフォーマンスを得るのが最善です。」と Senapathy 氏は言います。
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